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カフェインと睡眠:摂取量・タイミングが与える影響

私たちの日常生活に欠かせないカフェイン。コーヒーや紅茶、エナジードリンクなど、覚醒作用を期待して摂取することが多いですが、そのカフェインが実は睡眠に悪影響を与えることをご存じでしょうか? カフェインが睡眠に及ぼす影響は摂取量やタイミングに関係しており、適切な管理が必要です。

この記事では、厚生労働省が公開している「健康作りのための睡眠ガイド2023」[文献1]を参考に、カフェインの摂取と睡眠の関係について詳しく解説します。

目次

カフェインの睡眠への影響

カフェインは覚醒作用を持つ成分であり、摂取すると脳を刺激して目が覚めたような感覚を得ることができます。しかし、その効果が睡眠に与える影響は決して無視できません。研究によると、カフェインを摂取することで、寝つきが悪くなったり、中途覚醒が増えたり、睡眠効率が低下したりすることが分かっています。[文献2-3]

特に、カフェインはむずむず脚症候群や睡眠時歯ぎしりなどの睡眠障害を発症・悪化させるリスクがあるため、睡眠の質を保つためには摂取に注意が必要です。[文献4-7]

カフェインの代謝に個人差がある

カフェインの影響を受けやすさには個人差があります。例えば、日本人のカフェインの血中半減期(血液中のカフェイン濃度が半分に減少するまでの時間)は、3~7時間と幅があります。[文献8]

例えば、朝9時に400mgのカフェインを摂取した場合、半減期が5時間であれば、午後2時には200mg、午後7時には100mgが体内に残っている計算になります。研究によると、夕方以降に100mg以上のカフェインを摂取すると、入眠困難や徐波睡眠(熟睡)の減少、中途覚醒の増加が生じることが分かっています。[文献2]つまり、半減期が5時間の場合には、摂取した時刻がたとえ朝9時であったとしても、睡眠に悪影響を与える可能があるわけです。[文献9-10]

カフェイン摂取の目安と推奨摂取量

アメリカ食品医薬品局(FDA)、欧州食品安全機関(EFSA)、カナダ政府などは、成人に対して1日400mg以下のカフェイン摂取を推奨しています。[文献11]これは、ドリップコーヒーでおおよそ4杯分(700cc)に相当し、市販のペットボトルコーヒーでは1.5本分(750cc)にあたります。

この摂取量を超えると、カフェインの覚醒作用が強くなり、寝つきにくくなる、睡眠の深さが減るなどの問題が生じやすくなるため、摂取量の管理が重要です。

カフェイン摂取のタイミング

カフェインの摂取時刻も、睡眠への影響に大きな役割を果たします。カフェインは体内に長時間残るため、摂取するタイミングに注意が必要です。例えば、午後7時に100mgのカフェインを摂取した場合、午後12時になっても50mg程度のカフェインが体内に残ることになります。これが睡眠に悪影響を与える可能性があるため、カフェイン摂取は就寝の約6~8時間前には控えることが推奨されます。

18~65歳の成人を対象とした系統的レビューによると、107mgを超えるカフェイン摂取が夜間睡眠に影響を与え、217.5mgを超えると、就寝前13時間前の摂取でも睡眠に影響が出ることが示されています。[文献9]

良質な睡眠を確保するために

良質な睡眠を確保するためには、カフェインの摂取量を減らし、夕方以降のカフェイン摂取を避けることが重要です。もし、カフェインを含まない飲み物を選びたい場合は、麦茶やそば茶、黒豆茶、とうもろこし茶、ハーブティーなど、カフェインを含まない飲み物に切り替えるのも良い選択です。

また、眠気覚ましにカフェインを利用している方も多いかもしれませんが、カフェインの慢性的な摂取は依存を引き起こし、次第にその効果が弱くなります。もし、日中の眠気が続く場合は、睡眠時間の適正化や睡眠環境の見直しを行い、それでも改善しない場合は専門医に相談することをお勧めします。

まとめ

カフェインは覚醒作用があり、適切に摂取すれば日中の集中力を高める助けになりますが、摂取量やタイミングを誤ると睡眠に悪影響を与えます。特に、夕方以降のカフェイン摂取は睡眠の質を低下させるため、注意が必要です。良質な睡眠を得るためには、カフェインの摂取量を調整し、夕方以降の摂取を控えることが大切です。

参考文献

[1] 健康作りのための睡眠ガイド2023

[2]Landolt H-P, Werth E, Borbély AA, Dijk D-J. Caffeine intake (200 mg) in the morning affects human sleep and EEG power spectra at night. Brain Res 675: 67-74. 1995.

[3]Clark I, Landolt HP. Coffee, caffeine, and sleep: A systematic review of epidemiological studies and randomized controlled trials. Sleep Med Rev 31: 70-78. 2017.

[4]Bertazzo-Silveira E, Kruger CM, Porto De Toledo I, Porporatti AL, Dick B, Flores-Mir C, De Luca Canto G. Association between sleep bruxism and alcohol, caffeine, tobacco, and drug abuse: A systematic review. J Am Dent
Assoc 147: 859-866, 2016.

[5]Bayard M, Avonda T, Wadzinski J. Restless legs syndrome. Am Fam Physician 78: 235-240, 2008.

[6]Lutz EG. Restless legs, anxiety and caffeinism. J Clin Psychiatry 39: 693-698, 1978.

[7]Ohayon MM, Li KK, Guilleminault C. Risk factors for sleep bruxism in the general population. Chest 119: 53-61, 2001.

[8]ファイザー株式会社. 日本薬局方カフェイン水和物. 医薬品インタビューフォーム,2013.

[9]Gardiner C, Weakley J, Burke LM, Roach GD, Sargent C, Maniar N, Townshend A, Halson SL. The effect of caffeine on subsequent sleep: A systematic review and meta-analysis. Sleep Med Rev 69: 101764, 2023.

[10]Drake C, Roehrs T, Shambroom J, Roth T. Caffeine effects on sleep taken 0, 3, or 6 hours before going to bed. J Clin Sleep Med 9: 1195-1200, 2013.

[11]Verster JC, Koenig J. Caffeine intake and its sources: A review of national representative studies. Crit Rev Food Sci Nutr 58: 1250-1259, 2018.

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