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運動と睡眠の質:日中の身体活動が良質な眠りを作る理由

私たちの睡眠は、単なる休息の時間だけではなく、日中に使った体力やエネルギーを回復させる重要な役割を果たしています。実は、睡眠の質や必要な睡眠時間は、日中の身体活動量や強度と密接に関連していることがわかっています。

運動習慣がない人は、睡眠休養感が低くなる傾向にあり、逆に適度な運動習慣を持つことで、より良い睡眠を得ることができます。[文献1]

今回は、厚生労働省が公開している「健康作りのための睡眠ガイド2023」[文献2]を参考に、どのような運動が睡眠に良い影響を与えるのかを深掘りしてみましょう。

目次

運動が睡眠に与える影響

運動を日常的に行うことで、体をしっかりと動かし、心身を疲れさせることができます。これが入眠を促進し、中途覚醒を減少させ、結果的に睡眠時間を増やし、睡眠の質を向上させます。[文献3]また、運動習慣がない人は、睡眠でしっかりと休養を取っている感覚が低くなることが分かっています。運動習慣を持つことで、身体的な疲労感が深まり、より質の高い睡眠をとることができるのです。

ただし、運動の効果は運動のタイプや強度、タイミング、頻度によって異なります。自分の体調や生活スタイルに合わせて運動を取り入れることが大切です。

運動のタイプと睡眠への効果

運動にはさまざまなタイプがあり、睡眠に与える効果も異なります。代表的なものとしては、有酸素運動や筋力トレーニングがあります。

  • 有酸素運動(ウォーキングやジョギング)
     ウォーキングやジョギングといった有酸素運動は、寝つきを良くするだけでなく、深い睡眠を促進し、睡眠時間を増加させ、睡眠休養感を高める効果があります。[文献4-6]また、これらの運動は心身にリラックスをもたらし、寝室でのリラックスした状態をサポートします。
  • 筋力トレーニング
     ダンベルなどを使った筋力トレーニングも睡眠改善に役立つことがわかっています。[文献7]筋肉を使った運動は、疲労感を高め、入眠しやすくなると言われています。

運動強度と睡眠の関係

運動の強度も睡眠に与える影響を大きく左右します。特に中~高強度の運動は、睡眠の質を改善することが確認されています。[文献3]例えば、息が弾んで汗をかく程度の中強度の運動(散歩、軽い筋力トレーニングなど)は、入眠を促し、睡眠効率を改善する効果があります。

一方で、過剰に強度の高い運動は逆に睡眠を妨げることがあるため、注意が必要です。特に運動に慣れていない人は、軽い運動から始め、徐々に強度を増やしていくことをお勧めします。

運動のタイミング:いつ運動すればよいか?

運動を行うタイミングも睡眠に大きな影響を与えます。運動で体温が上がると、血液循環が良くなり、放熱が促進され、深部体温が下がります。この深部体温の低下が、入眠を助ける重要な要素となります。[文献8]

  • 日中の運動
     日中に運動を行うことで、身体活動量を確保するだけでなく、寝る直前まで興奮状態が続かないようにできます。運動後、体温が下がることでリラックスした状態になり、スムーズに眠りに入ることができます。
  • 夕方・夜の運動
     夕方や夜の時間帯に運動をすることも、睡眠の質を改善するために有効です。[文献9]ただし、運動は就寝の2~4時間前までに終えるようにすると良いでしょう。運動後に興奮状態が続くと、寝つきが悪くなる可能性があるため、寝る前にリラックスする時間を取ることが大切です。

運動習慣を身につけるために

理想的には、1日60分程度の運動を習慣化することが健康に良いとされていますが、忙しくてまとまった時間が取れない場合でも、少しずつ運動を取り入れていくことが重要です。毎日の生活の中で、ウォーキングや掃除などの軽い身体活動を増やし、運動習慣を作ることから始めていきましょう。

まとめ

運動は睡眠の質を向上させるために欠かせない要素であり、適度な運動習慣が睡眠の質や休養感を高めることがわかっています。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を中心に、無理なく続けられる運動習慣を身につけることで、より深い眠りを手に入れることができます。運動の強度やタイミングに配慮し、健康的な生活習慣を取り入れることが、良質な睡眠を得るための秘訣です。

参考文献

[1]Kline CE, Hillman CH, Sheppard BB, Tennant B, Conroy DE, Macko RF, Marquez DX, Petruzzello SJ, Powell KE, Erickson KI. Physical activity and sleep: An updated umbrella review of the 2018 Physical Activity Guidelines Advisory Committee report. Sleep Med Rev 58: 101489, 2021.

[2] 健康作りのための睡眠ガイド2023

[3]Matsumoto T, Tabara Y, Murase K, Takahashi Y, Setoh K, Kawaguchi T, Muro S, Kadotani H, Kosugi S, Sekine A, et al. Combined association of clinical and lifestyle factors with non-restorative sleep: The Nagahama Study. PLoS One 12: e0171849, 2017.

[4]Kubitz KA, Landers DM, Petruzzello SJ, Han M. The effects of acute and chronic exercise on sleep. A meta-analytic review. Sports Med 21: 277- 291, 1996.

[5]Tan X, Alen M, Wiklund P, Partinen M, Cheng S. Effects of aerobic exercise on home-based sleep among overweight and obese men with chronic insomnia symptoms: a randomized controlled trial. Sleep Med 25: 113-121, 2016.

[6]Aritake-Okada S, Tanabe K, Mochizuki Y, Ochiai R, Hibi M, Kozuma K, Katsuragi Y, Ganeko M, Takeda N, Uchida S. Diurnal repeated exercise promotes slow-wave activity and fast-sigma power during sleep with increase in body temperature: A human crossover trial. J Appl Physiol (1985) 127:168-177, 2019.

[7]Kovacevic A, Mavros Y, Heisz JJ, Fiatarone Singh MA. The effect of resistance exercise on sleep: A systematic review of randomized controlled trials. Sleep Med Rev 39: 52-68, 2018.

[8]Ainsworth BE, Haskell WL, Herrmann SD, Meckes N, Bassett DR, Jr., Tudor-Locke C, Greer JL, Vezina J, Whitt-Glover MC, Leon AS. 2011 compendium if physical activities: A second update of codes and MET values. Med Sci Sports Exerc 43: 1575-1581, 2011.

[9]Krauchi K. The thermophysiological cascade leading to sleep initiation in relation to phase of entrainment. Sleep Med Rev 11: 439-451, 2007.

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