私たちの睡眠環境には、温度や照明だけでなく、音も大きな影響を与える要素です。特に、道路や鉄道、航空機などによる外部の騒音は、私たちの睡眠に悪影響を及ぼすことが知られています。最近の研究によると、騒音が睡眠に与える影響を避けるためには、静かな睡眠環境を整えることが非常に重要です。
この記事では、厚生労働省が公開している「健康作りのための睡眠ガイド2023」[文献1]を参考に、騒音が睡眠に与える影響とその対策について詳しく解説します。
騒音と睡眠の関連性
国際的な大規模な研究では、道路や鉄道、航空機の騒音が住民の主観的な睡眠障害と関連していることが明らかにされています。この調査では、外部の騒音が直接的に睡眠に影響を与え、睡眠の質を低下させることが確認されました。[文献2]さらに、寝室内で測定した騒音が、アクチグラフィー（超小型加速度計）で測定した睡眠効率の低下や、入眠潜時（寝床に入ってから眠りに入るまでの時間）の延長、そして中途覚醒時間の増加と有意に関連していることも分かっています。[文献3]
これらの結果から、騒音は私たちの睡眠の質に大きな影響を与える要因の一つであり、静かな睡眠環境の確保が非常に重要であることがわかります。
騒音の影響：覚醒頻度と深い睡眠の減少
睡眠中に騒音が曝露された場合、覚醒頻度が増加し、深い睡眠の時間が減少することが報告されています。[文献4]騒音は脳に対する刺激となり、寝ている間に何度も目が覚めてしまうことがあるのです。これにより、深い眠りが取れず、睡眠の質が悪化します。
ただし、ある程度の騒音に慣れてしまうと、その影響が減少する場合もあるため、実験研究における影響が過大評価されている可能性も示唆されています。
騒音に対する感受性の個人差
騒音が睡眠に与える影響には個人差があります。特に、子どもや高齢者、または既往症を持つ人々は、騒音に対して敏感であり、健康に与える影響が大きいことが知られています。例えば、高齢者や病気を持っている人々は、騒音が引き起こす睡眠の質の低下が健康に深刻な影響を及ぼすことがあります。
このため、欧州のWHOガイドラインでは、夜間の屋外騒音を40デシベル（dB）未満に抑えることを推奨しています。[文献5]このガイドラインは、夜間の騒音が健康に与えるリスクを最小限に抑えるための指針として重要です。
騒音対策：防音機能の強化
屋外の騒音が気になる場合、最も効果的な対策の一つは、寝室の防音対策です。防音機能を備えた窓や壁を設置することで、外部からの騒音を遮断し、静かな睡眠環境を作ることができます。特に、交通量が多い場所や空港周辺に住んでいる場合、これらの対策は睡眠の質を大きく向上させる効果が期待できます。
また、寝室の位置を工夫したり、音を遮るためにカーテンや耳栓を活用することも有効です。これらの工夫により、睡眠中の騒音曝露を最小限に抑え、より良い眠りを得ることができます。
まとめ
騒音は私たちの睡眠に対して悪影響を与える可能性が高く、静かな睡眠環境を作ることが非常に重要です。騒音が睡眠に及ぼす影響には個人差があるものの、特に子どもや高齢者、病気を持つ人々は注意が必要です。外部の騒音を減らすためには、防音機能を備えた窓や壁を設置することが有効です。睡眠の質を向上させ、健康を守るために、静かな睡眠環境を意識的に整えることが重要です。
参考文献
[2]Basner M, McGuire S. WHO environmental noise guidelines for the European region: A review on environmental noise and effects on sleep. Int J Environ Res Public Health 15, 2018.
[3]Yamagami Y, Obayashi K, Tai Y, Saeki K. Association between indoor noise level at night and objective/subjective sleep quality in the older population: A cross-sectional study of the HEIJO-KYO cohort. Sleep 46: zsac197, 2023.
[4]Basner M, Muller U, Elmenhorst EM. Single and combined effects of air, road, and rail traffic noise on sleep and recuperation. Sleep 34: 11-23, 2011.
[5]Night noise guidelines for Europe. World Health Organization Regional Office for Europe, 2009.
