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「寝だめ」は健康に逆効果?平日の睡眠不足を休日で取り戻す危険性

多くの人が、平日の睡眠不足を休日に長時間寝ることで取り戻そうとする「寝だめ」を習慣にしています。しかし、実際にはこの方法で睡眠不足を解消することはできません。

むしろ、寝だめを繰り返すことで健康に悪影響を与える可能性があることが、近年の研究で明らかになっています。

本記事では、厚生労働省が公開している「健康作りのための睡眠ガイド2023」[文献1]を参考に、適切な睡眠時間について解説していこうと思います。

週末の「寝だめ」が引き起こす社会的時差ボケ

「寝だめ」は、国際的には「週末の眠りの取り戻し (Weekend catch-up sleep)」と呼ばれ[文献2]、頻繁に体内時計がずれることによって健康に悪影響を及ぼすため、「社会的時差ボケ (Social Jetlag)」とも呼ばれています。[文献3]これは、普段は遅く寝て早く起きる平日と、休日に寝過ぎて体内時計が混乱することによって引き起こされます。

社会的時差ボケは、慢性的な睡眠不足からくる健康への悪影響と、頻繁に体内時計がずれることによる影響の両面で健康被害を与えるため、肥満や糖尿病、脳血管障害、心血管疾患、うつ病などのリスクを高めることが報告されています。[文献4]

寝だめのメリットは限定的で、逆にリスクが増加

休日に寝だめをしても、平日の日中に感じる眠気を完全に解消することは難しいという報告があります。[文献5]

実際、近年の調査によると、平日6時間以上寝ている人が、休日に1時間程度の寝だめを行った場合、寿命短縮リスクが低下することが示されています。

しかし、平日6時間未満しか寝ていない人が寝だめをしても、寿命短縮リスクが逆に高まることが分かっています。また、平日6時間以上寝ていても、休日に2時間以上寝だめをする習慣がある場合、そのリスクは軽減されません。[文献6]

休日の長時間睡眠は平日の睡眠不足のサイン

休日に長時間の睡眠を必要と感じる場合、それは平日中の睡眠不足のサインであり、平日に十分な睡眠を確保するよう睡眠習慣を見直す必要があります。

寝だめで平日の睡眠不足を取り戻すことは、体内時計に混乱を与えるだけでなく、健康にも悪影響を及ぼす可能性があるため、早期に改善策を講じることが重要です。

平日の睡眠不足を休日に寝だめで取り戻すことは、実際には健康に悪影響を与える可能性が高いことが分かっています。社会的時差ボケや体内時計の乱れが引き起こすリスクを避けるためにも、平日からの睡眠習慣を見直し、十分で質の高い睡眠を継続的に確保することが重要です。

睡眠をしっかりとり、心身の健康を保つことが、生活の質を高めるためには欠かせない要素となります。

参考文献

[1] 健康作りのための睡眠ガイド2023

[2] KimSJ, Lee YJ,Cho SJ,Cho IH, LimW, LimW. Relationship betweenweekend catch-up sleep and poor performance on attention tasks in Korean adolescents. Arch Pediatr AdolescMed 165: 806-812, 2011.

[3] Wittmann M,Dinich J,MerrowM, Roenneberg T. Social jetlag: Misalignment of biological and social time.Chronobiol Int 23: 497-509, 2006.

[4] Caliandro R, Streng AA, van Kerkhof LWM, van der Horst GTJ, Chaves I. Social jetlag and related risks for human health: A timely review. Nutrients 13: 4543, 2021.

[5] Banks S, Van Dongen HP, Maislin G, Dinges DF. Neurobehavioral dynamics following chronic sleep restriction: dose-response effects of one night for recovery. Sleep 33: 1013-1026, 2010.

[6] Yoshiike T, Kawamura A, Utsumi T, Matsui K, Kuriyama K. A prospective study of the association of weekend catch-up sleep and sleep duration with mortality in middle-aged adults. Sleep Biol Rhythms 21: 409-418, 2023.

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